アニッシュの記事 2014年01月

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2013 ヴァイカンゼー

[2014.05.10]

 

tata

大会会場にてアニッシュ・ギリとソピコ・グラマシビリ© Official website

 アニッシュ・ギリがヴァイカンゼーで「銀メダル」の快挙!

 2014年1月、アニッシュ・ギリがヴァイカンゼーで2位タイとなりました。ヴァイカンゼーはスポンサーの名を冠してタタ・スティール・チェス・トーナメントとも呼ばれ、チェス界でナンバー1を決める大会とみなされている伝統ある大会です。そこでのこの成績はジュニア・ランキング世界1位の彼にとっても快挙といえるものだったと思います。年末の休暇を札幌で家族とゆっくり過ごしたことがよかったのか、函館の温泉が効いたのか・・・、とにかくうれしいニュースをお届けできました!

大会公式サイト

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© Ab Sheel

チェス界のウィンブルドン

 過去6年間、僕にとって新年は同じように始まっている。ヴァイカンゼーのチェス・トーナメントだ。今大会は、一度くらい自分のチェスを指したいと切望している僕にとって、今までより重要な意味があったし、かつてないほど待ち望んでいたものだった。

 このイベントはチェス界のウィンブルドン(テニス界では世界最高峰の大会)として知られている。とはいえ、僕としてはいつの日かみんながテニス界のヴァイカンゼーとウィンブルドンを呼んで欲しいと思っているのだが・・・。

© Official website

 スポンサーの会社、タタ・スティールがこの伝統を維持できるかどうかについて深刻な危機にあるというウワサがいくつも流れていたが、結局、予算を少し削って続けることになったようだ。つまりこれまでの大会に比べれば規模を小さくして、大会の格は維持するみたいなことらしい。参加人数は12人に減った(今はやりの4~6人大会形式よりはずっと豪華!)が、量は減っても質が落ちなかったことを思えば、何も文句は言えない。

 また、よりメディアの関心をひくため、この大会を旅に出すことにしたようだ。1ラウンドをアムステルダムのライクス博物館で、他のラウンドをアイントホーフェン・ハイテクセンターで行うという。そのこの自身は立派な挑戦ではある。この件について、多くの人があれこれ語っているが、この記事ではこの大会の僕のチェスがどうだったかにだけ焦点を当てたい。詳しくはその関係記事がある別サイトの方をお読みいただきたい。

日本でのすてきなクリスマス休暇で・・・パワー全開!

© Official website

 日本でのすてきなクリスマス休暇と、経験あるグランド・マスター、ウラジミール・トゥクマコフとの短いセッションによって、僕のプレパレーション(大会準備)はできあがった。結果論から言うと、これらすべてが功を奏した。完ぺきな準備で、大会の出だしからパワー全開だったからだ。 

 ペアリングは終わりに近づくにしたがって強い相手と当たるような順番だった。いいスタートが切れそうに感じていたし、実際に、どこで満足するかは別にして、ゴールには到達することができた。1ラウンドで黒番の僕がすぐにドローにしたことについては、ベルリン・ディフェンスに対して何の負荷もかけることができなかったのだから、白番のレニエ・ドミンゲスが自慢するものは何一つなかったにちがいない。さらに、すでに2ラウンドで僕のゲームは劇的にうまく行って何とか最初の勝利につながった。

 ゲーム解説:ギリ - ナイディッチュ (解説は英語)

 この勝利は僕の気持ちを高めてくれたが、いきなり直後のゲームで、僕のプラス・スコアが危うくなった。

 ゲーム解説:ファンヴェリー - ギリ (解説は英語)

© Chess-News

 冷や汗をかいたゲームだったが、これで僕は信じられないほどうきうきした気持ちでレスト・デイを迎えることができた。

ライクス美術館では・・・

 ライクス美術館では楽しかったし、たくさんの写真をとられたり、インタビューされたりで、少しとまどうところもあった。それでもウェズリー・ソーとのゲームはいい感じで進行していたし、全局を通してプレッシャーをかけることができていた。ただし、勝つチャンスは逃してしまったが、まあ、これだけは行っておきたいのだが、相手は非常にうまくディフェンスしていたし、僕が何か特にそのゲームで悔しい思いをしているという訳ではない。

 次のレスト・デイの後、僕はハリクリシュナとの落ち着いたゲームを期待していた。しかし、彼が選んできたのは落ち着いて見えるイタリアン・ゲームの中での激しい戦法だった。 僕はタイム・コントロールが入る前にはチャンスを逃していて、40手の後には保っていた優勢がほとんどなくなっていることを納得していた。

 ただ、幸運なことに相手は総仕上げに失敗し、僕はふたたび優勢を奪うことができた。ほとんど勝ちを目前にしたときでさえ右往左往することはあったが、面白いルーク・エンディングに持ち込むことができて、それを何とか勝ち切ることができた。

 ゲーム解説:ハリクリシュナ - ギリ (解説は英語)

堅く、控えめな+2

 このゲームの後、この記事の読者には少しがっかりかもしれないが、僕は全てのゲームをドローにした。でも、いくつかのゲームはおもしろいものだったと思う。

 たとえばゲルファントに対してうまくエンドゲームを指した後で、絶好のチャンスを逃したゲームだ。次のラウンドではカルアーナに対して難しいポジションを守り切った。1位を走るアロニアンとは、これも押し気味のゲームになったが、それ以上にはならなかった。ラポールとのゲームも面白かったが、嵐が去って残ったルーク・エンディングはドローだった。カリャーキンには白番だったが、 何も得るものがなく、最終ラウンドでは序盤で起きた問題を解決するのに精一杯になってしまった。

 ゲーム解説:ナカムラ - ギリ (解説は英語)

© Chess-News

 という訳で僕のスコアはちょっと控えめな+2(2つ勝ち越し)で終わった。確かにその成績では、この大会で優勝したアロニアンに対して何らかのプレッシャーをかけることができるものではない。でも僕は自分のチェスに満足していたし、後味良く会場を去ることができたと思う。

 一週間くらい休みをとって、この記事を書くことがチェスのプロとしての最初のお仕事になったが、楽しみなのは、何になるかまだ分からないが次の大会だ。

 ではみなさん、そのときまで!

 P.S.ニューインチェスのマガジンにはこの大会について僕の書いた記事が掲載されている。よりアロニアンの快挙に焦点を当てたものとなっているが、ぜひお読みいただきたい。

 

  Name Score Rating TPR 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
1 Aronian, L. 8.0 / 11 2812 2911   ½ 1 1 1 1 ½ 0 1 ½ ½ 1
2 Giri, A. 6.5 / 11 2734 2809 ½   ½ ½ ½ ½ 1 ½ ½ ½ ½ 1
3 Karjakin, S. 6.5 / 11 2759 2806 0 ½   0 ½ ½ ½ 1 ½ 1 1 1
4 Caruana, F. 6.0 / 11 2782 2775 0 ½ 1   0 ½ ½ 1 ½ 1 1 0
5 Dominguez, L. 6.0 / 11 2754 2778 0 ½ ½ 1   1 0 ½ ½ ½ 1 ½
6 So, W. 6.0 / 11 2719 2781 0 ½ ½ ½ 0   ½ 1 ½ 1 1 ½
7 Harikrishna, P. 5.5 / 11 2706 2746 ½ 0 ½ ½ 1 ½   ½ 1 0 0 1
8 Van Wely, L. 5.0 / 11 2672 2713 1 ½ 0 0 ½ 0 ½   1 0 ½ 1
9 Nakamura, H. 5.0 / 11 2789 2703 0 ½ ½ ½ ½ ½ 0 0   ½ 1 1
10 Gelfand, B. 4.5 / 11 2777 2675 ½ ½ 0 0 ½ 0 1 1 ½   0 ½
11 Rapport, R. 3.5 / 11 2691 2614 ½ ½ 0 0 0 0 1 ½ 0 1   0
12 Naiditsch, A. 3.5 / 11 2718 2612 0 0 0 1 ½ ½ 0 0 0 ½ 1  

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