アニッシュの記事 2013年11月

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チェス世界選手権 (2)

[2013.11.23]

カールセンが世界チャンピオンに!

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新世界チャンピオンのカールセン(右) © Chess.com

 文句のつけようがない世界チャンピオンの誕生

 全12局のマッチでしたが、2戦を残し、3勝7ドローでノルウェーのマグナス・カールセンが世界チャンピオンになりました。海外でもチェスがトップ・ニュースになることはまれですが、少なくとも前チャンピオンのアナンドがいるインドと、ノルウェーの新聞ではトップ扱いであり、CNNなどでも報道されたようです。(日本でもYahoo JAPAN のニュースになりました!:shinsaku 君からの情報)

 インタビューでアナンドが語ったとおり「すべてにわたって圧倒された。」ような内容でした。カールセンは「第3局、第4局のドローで落ち着きを取り戻した。」と語っていましたが、実際第5局、第6局は信じられないような強さを見せつけました。インドの女性マスターであるサクデフが認めた通り「文句のつけようがない世界チャンピオンの誕生」です。なにしろレーティングも世界1、そして史上ナンバーワンなのですからね。

 アナンドにチャンスがあったのは第9局でした。カールセンが「初めてメイトされるかもしれない気持ちになった。」と認めているゲームです。しかし、最後に、信じられない読み違いで・・・。

 アナンドにも拍手を

 いいところがほとんどなかったアナンドですが、そんな彼も若いころは「スピード・モンスター」と呼ばれていました。どんなに強いマスターでさえ(あのカスパロフでさえ)彼を怖れたものです。何しろ持ち時間が2時間くらいのクラシカル・ゲームなのに全部で10分少々しか持ち時間を使わずにGMたちを次々に破っていったのです。あるGMが真顔でこう言ったことがあったそうです。「アナンドの手がコンピューターの手とそっくりだって? 当たり前さ、彼の頭の中にはフリッツ(チェスのプログラム)がインストールされているんだから!」

 そうです。・・・アナンドはまさにアジアのカリスマ的存在であり、アジアのレベルを大きく引き上げてきました。負けたアナンドにも拍手を贈りましょう。

 アニッシュの解説をお届け出来ることに

 史上最強のカールセンですが、その彼に対し、黒番を持って22手で勝利した年下プレーヤーがいます。そのプレーヤーとは・・・?

 アニッシュ・ギリは、このマッチについてNew In Chess に英語の解説を掲載する予定です。アニッシュの英語の公式サイトでもその記事の転載は不可能ですが、日本語ではアニッシュの解説をお届けできることになりました。どうかお楽しみに!

 アニッシュ自身はユーロピアン・チーム選手権が終わったところです。その報告が届いていますので、すぐにここにアップする予定です。次は世界チーム選手権に出場して連覇をねらいます。また応援の方をよろしくお願いします!

 (クイズの答え:カールセンに勝ったのは、もちろんアニッシュです!!)


ユーロピアン・チェスクラブ・カップ2013 (2)

[2013.11.10]

<1局目の解説が日本語になりました!>

「優勝する宿命を背負わされるのが、これほどの重荷になるとは・・・」

<アニッシュ・ギリ自身による記事とゲーム解説>

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© Official website

楽勝のスタート・ダッシュ

 

 ご存知だろうが、ここ1,2ヶ月の間、連続して行われるメジャーなチーム・イベントに僕は出場することになっているのだが、ユーロピアン・チェスクラブ・カップ(ECC)はその最初のものだ。

 あとに続く ユーロピアン・チーム・チェス選手権(ETCC)や世界チーム選手権とちがって、ECCで僕が参加したチームはダントツの優勝候補だった。僕は「SOCAR」というアゼルバイジャンからのチームで、笑ってしまうほど他より強いメンバーをそろえていた。カルアーナ、ラジャボフ、トパロフ、カムスキー、マメジャロフ、ワンハオ、サファーリといったメンバーが、経験豊富なトレーナーであるウラジミール・トゥクマコフに率いられていた。平均レーティングも一番で、まちがいなく僕たちは優勝(昨年からの連覇)すると思われていた。

 僕たちのライバルは主にロシアの3チームだった。最強はマラチテという、同じようにスターがいっぱい詰まったチームであり、ベストと言えるくらいのラインナップだった。それに、西洋の覇権を体現していたのはチェコのチームであるノーヴィー・ボールだ。先走ってネタバレになるが、このチームが大会で優勝を勝ち取っていなかったら、失礼ながら大きなトップ・シードの影にかくれて目立たない彼らを、この時点で紹介することはなかっただろう。もっとも、目立っていなかったからこそ、彼らが勝利したとは言えないだろうか?

 しかしながら、先を急ぐのは止めて、大会のスタート地点にもどろう。僕たちは、ライバルたちと同じように最初の2ラウンドは楽勝スタート・ダッシュで通過した。僕自身のプレーは、半分不正確で、とても荒っぽかった。とはいえ僕は最下位ボードだった訳だし、前の大会でかなり落ちたとはいえ、対戦相手とのレイティング差は、相手をビビらせるには十分な威力を持っていたようだ。(棋譜解説参照)

©Official website

ぶち当たった壁

 僕たちが最初にぶち当たった壁はウグラーだった。僕は手堅いロシア人プレーヤー、GMのキスツーリン相手に黒番で押していた。しかし、ポーン数が多くてもルーク・エンディングを勝ち切れなかった。終盤に向けてさらにプレッシャーをかけることができそうだったのに、実戦的なチャンスがあっというまに消えてしまっていたからだった。

 ほとんどのボードで押していた我々のチームだったが、マッチの結果はどうなるか分からなかった。しかし、最終的に互角だったところ(トパロフ vs. コロボフ)を勝ち、負けそうだったところ(ルブレフスキー vs. カムスキー)をドローにして4対2のスコアでがっちりと勝利することができた。

 最終回の1つ前が決勝戦というべきラウンドになった。というのは、これまで僕たちはすでにリードしてはいたが、追ってくる「Gチーム」が金星をねらっていたからだった。

 Gチームは、少しレーティングが低い(もちろん、比較しての話しだ)が世界最強軍団を打ち破ろうと燃えていた。ナヴァラ、ウォイタシェック、ラズニッチ、サシキラン、フラセック、バーテル、彼らがメンバーだったから、公園で散歩するような訳にいかないことは明白だった。 

 しかし、最初は順調だった。僕のポジションは始まってすぐに圧倒的な形勢になった。僕のプレーはやはり荒っぽかったが、以前のラウンドと比べて幾分正確にアタックすることができた。見方を変えれば力強い危険なプレーで挑発してきたのは僕の相手の方だった。(棋譜解説参照)

ドラマチックで痛烈な結果・・・

©Official website

 単純で論理的な戦法で、マッチは順調に進んでいた。ボジションはまだクリアーではなかったが、早くも1つ勝ちを取り、僕たちの勝利は約束されていた。しかし、チェスは単純な論理でかたづけるには、あまりに難しいゲームだ。あれよあれよという間に、上の3つのボードが負けたのは不運だった。

 最終的なスコアが2.5対3.5だったことは、ドラマチックで痛烈な結果となった。とりわけがっかりだったのは、新しくトップに立ったノーヴィー・ボールが優勝候補となり、僕たちには優勝のチャンスがなくなったことを知ったときだった。

 僕たちの最後のゲームはセント・ペテルスブルグという大会で最も危険な相手との対戦だった。チーム・メイトの代わりに僕が言わせてもらえればチーム全員が大きなプレッシャーと戦っていたし、事実、6ドローで終わったのは幸運だった。上位に大きな番狂わせは起きかった。開会式のときには誰も優勝すると思っていなかったGチーム、彼らはすばらしいスコアでタイトルをつかみ取ったのだった。

さらなる元気を、パワーを、ご声援を!

©Official website

 最後のラウンドが終わったときには第3位もそれほど悪くないと感じていたが、もっと上をねらってい訳で、その結果にがっかりだった。優勝する宿命を背負わされるのが、これほどの重荷になるとは思わなかった。しかし、今回も学んだことは多く、来年が非常に楽しみにはなった。

 さて、次はオランダ・チームがヨーロッパでどの辺の位置か試されるときだし、その後には世界チーム選手権も控えている。

 どうか、さらなる元気を、パワーを、ご声援をお願いしたい!

 

<アニッシュのゲーム解説をご覧ください。>

(1局目が日本語になりました!)


チェス世界選手権 (1)

[2013.11.09]

アナンド vs. カールセン の決戦

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盛大な開会式 © Chessbase

 11月9日、世界中のチェス・ファンが待ちに待った一戦が、インドのチェンナイで始まりました。

 インドの英雄、世界チャンピオンのアナンド,ヴィスワナサンと、レイティング世界一のカールセン,マグナスの一騎打ちです。アジア出身初の世界ナンバー1、経験豊富な老練の王者アナンドが勝つか、若き大天才、挑戦者のカールセンが勝つか・・・。

 このサイトでは、試合結果とアニッシュからコメントや解説があれば掲載していきます。最新の詳しいニュースを得たい方は、下のリンクをご利用ください。

公式サイトライブチェスベース (以上英語)

函館チェスサークル (以上日本語) 

 


ユーロピアン・チェスクラブ・カップ2013 (1)

[2013.11.02]

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大会公式サイト

スランプを脱出したアニッシュ

かなり格上の大会

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チームメイトのワンハオ(左)とアニッシュ(右)

 ギリシャのロードス島において、10月19日~27日、ユーロピアン・チェスクラブ・カップというヨーロッパが舞台のチェスのチーム戦が行われました。観光で有名といってもロードス島はかなりマイナーな場所ですが、参加しているプレーヤーには世界トップ・クラスが何人もいます。その顔ぶれから推察すればかなり格上の、ヨーロッパではメジャーな大会だということがわかります。

 チェスクラブ・カップというのは、サッカーと非常に似ているシステムであり、有名チェスクラブがチーム・メンバーを集めての対抗戦です。メンバーはそのクラブが集めますので、人間関係、国籍はバラバラなのが面白いところです。

何と何と7番ボード

 アニッシュはSOCAR(サッカー)という前チャンピオン・チームのメンバー。世界ランキングは20位近いアニッシュですが、それでもチーム内では、何と何と7番ボードの位置です。これは珍しい。しかし、上にはカルアーナ、ラジャボフ、トパロフ、カムスキー、ワンハオがいるのですから、それを考えれば仕方ありません。

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左からアニッシュ、ワンハオ、マメジャロフ、カムスキー

大きな番狂わせ

 いやはや、このメンバーで世界選手権予選ができそうなくらいの豪華メンバーをそろえたチームです。優勝候補だったのも当然でしょう。そんなチームですから、また今年も優勝かというくらい順調に勝ち進んでいましたが、大きな番狂わせが 6ラウンド に起こりました。

 伏兵の Novy Bor(ノーヴィ・ボール)という5番手チームに トップ・シードのSOCAR が負けてしまったのです。アニッシュとワンハオは下位ボードで勝ちましたが、カルアーナはじめトップが総崩れでした。

アニッシュ自身は不満のない成績

 この Novy Bor は勢いづいてその後も勝ち進み、奇跡的な優勝となりました。アニッシュのチームは3位となってしまい、優勝を逃しました。

 楽勝と思っていたチーム関係者はがっかりだったでしょうが、アニッシュ自身はというと、どうやら前の大会で見せたスランプから脱出できたようです。FIDEレイティングをわずかでも上げることができ、ランキングも11月で世界21位にもどしました。本人も、おそらく 不満のない成績 だったのではないでしょうか。

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ECCで3位だったのは SOCAR のチームにとってがっかり・・・。次はオランダ・チームに入ってのチーム戦だ。始めはヨーロッパ選手権、それから世界チーム選手権!