アニッシュの記事 2012年08月

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ビール・チェス・フェスティバル2012 その2 アニッシュの自戦記

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第45回ビール/ビエンヌ

国際チェス・フェスティバル

7月21日~8月3日、スイス


世界トップクラスと渡り合ったゲームを 解説

大会後のアニッシュのインタビュー(英語) 関連記事 大会の公式サイト

 

[2012年 08月20日]

 『僕なんかがこの中に入っていいのかなぁ・・・』

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表彰式で3位のアニッシュ(右端) © Official site

 このごろ小さくなったしまった世界チェス界にも、うれしいことにトップ・プレーヤーたちの予定表に書き込まれるべき伝統あるチェス大会がいくつか残っている。 ビール・チェス・フェスティバルもその一つで、2回も参加できた僕は幸運だと思っている。 その大会も第45回を迎え、主催者はすばらしい参加プレーヤーを集めていた。 僕なんかがこの中に入っていいのかなぁ・・・と感じてしまうくらいの豪華メンバーで、 カールセン以下、モロゼビッチ、ナカムラ、ワン・ハオ、バクロ、そして後にはボロガンが加わった。

 さらにラッキーだったのは、この直前行われたオランダ選手権の圧倒的勝利(7ラウンドで6ポイント)、これが、 世界トップ・クラスと戦う僕には追い風となり、ビール大会で成功した重要な要素になったのは確かだった。

 スタート直後から、2回連続黒番でモロゼビッチとナカムラに当たるという試練が待ち受けていた。 (オランダ選手権の最後でスメーツに黒番だったことを入れると3回連続だしね・・・) それでも、優勢な局面も作りながら、2戦して1勝1分けと上々の結果で乗り越えることができた。 特に一番エキサイティングですごい戦いだったのは、次のゲームだ。

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モロゼビッチ対アニッシュ © Official site

【 1ラウンド: 対モロゼビッチ戦の自戦記

 

 やっと白番が当たったときだった。エチエンヌ・バクロと対戦で面食らったのは、 突如として目の前に展開された予期せぬバクロのKID熱だった。 (KIDはキングズ・インディアン・ディフェンスの略で、バクロはKIDを使う多くプレーヤーではなかった) 僕自身の目を疑ったくらいだった。が、先日のフレンチ・リーグで、バクロがオランダの教祖的GMである ファンヴェリーと対戦したときのゲームの進行を、そっくりなぞり、新手を出すというトリックを試すことができた。 この小さなトリックは大きな成果をもたらし、すばらしい3ラウンドのゲームが終わってみると、 思いがけず僕はトップに立っていた。

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アニッシュ対バクロ © Official site

【 3ラウンド: 対バクロ戦の自戦記

 

[2012年 08月22日]

 ワン・ハオに対して今の勢いをしっかり生かそうとしたが、それは大失敗に終わった。 ゼーミッシュの難しいラインに入った後で、自分のプレパレーションと記憶が突然あやふやになって、 分からなくなってしまったからだった。g3 とする固い陣形で立と直そうとしたが、 驚いたことに2,3手で敗勢になってしまった。そのゲームはかなりこたえたし、 がっかりする結果となってしまったが、このようなトーナメントでは、結果にいちいち後悔しているヒマはない。 その後、良かったのは、完璧に立ち直った僕が、カールセンを黒番で苦しめることができたことだ。

 僕は、以前得意としたペトロフで立ち向かったが、 世界ナンバー・ワンのカールセンは勝てるポジションにしようと必死だった。 ただ、そんなシナリオになることはすべて僕の想定内であり、序盤が終わると、 黒番で互角にする以上のことを考えられるような状況になっていた。マグナス・カールセンは、 a4!? や Re4!? といったイヤラシイ手で迫ってきたが、それでも僕の Nf6! を見落としてからは、 僕の優勢が目に見えるようになっていた。そんな局面に喜び過ぎたせいか、僕は簡単な Qg4! をミスして、 Nd2? の悪手でお返しをしてしまうことになった。その後は自分のテンションを下げることにして、 平衡を保つことに徹し、何とかそれで終わらせることができた。

 普通はここでレスト・デイ(お休みの日)なのだが、ちがった。 このトーナメントは変わったスケジュールで、大会10日間を6日と4日に分けていた。 これは並行して行われたオープン大会に呼応したものになっていた。

 代わりに入ったボロガン(2ラウンド後にモロゼビッチは健康上の理由で途中退会となったが、 幸運にもすぐにボロガンが代わりに入った)との対戦では、序盤で優勢になるなど予想していなかった。 僕の Nd2 は引き過ぎに見えるが、Nd2 と Nc2 の陣形は自慢できる形だった。

 およそ13手目くらいで、すでに僕はどうやって勝とうかと考え始めていた。しかし後で、フーディニ (というチェスの有名パソコン・ソフト)が、0.00 (つまり完全に互角)と局面を評価したのを見て苦笑してしまった。 僕の好きな Bg2 のポジションだったとはいえ、どれだけ脳天気だったか・・・。 それでも、僕は2,3手後でポーン得となった。相手は明らかにその代償があるとはいえ、 バランスを保つのに十分かは、はっきりしない感じだった。

 相手の持ち時間切迫のときに、僕はピースを組み直して押したけれども、 黒が第一波の攻撃に耐え切ったのは驚きだった。僕の 29. Rb1? はひどい非論理的な手だったが、 その手には訳があった。ルーク交換をした後、a7 ポーンを取りに行く 30... Nb6 に対して 31. Na5 Rd6! 32. Nc6 Rd2 のようになったときに、33. Nxa7 Rxa2 で、 相手の b6 ナイトと同じように僕の a7 ナイトもルークの当たりになっていることを見落としていたからだった。 【それでは優勢な局面を一気にドローっぽくしてしまう。ポーンが片方に寄っている形で、 ルークのあるエンディングはドローになりやすい。】これはちょっとショックだった。 そんな訳で僕は局面のコントロールをほとんど失ってしまった。

 ただし、持ち時間の調整の後 41手目に非常に強力な手 Nd2! を発見することができたのは幸運だったと思う。 このナイトのスイッチ・バックが僕に再びアドヴァンテージを与えてくれた。 それでもポーン1個得を活かすことは非常に大変な苦労だった。 が、とにかく相手のミスに助けられ、僕も正確に指すことで、何とか90手以上、 7時間かかった長いゲームを勝ち切ることができた。

 やっとレスト・デイになったし、レスト・デイが必要だった。ビール湖の美しい眺めを見ながら、 温かい午後を丘の上のレストランで過ごす時間は、あっと言う間に過ぎ去り、 気がつけばヒカルに白番で相まみえる時を迎えていた。

 手順の妙で、自分が(生意気に言わせてもらうと)エキスパートであり、ヒカルがよく知らないラインに、 うまく誘い込むことができた。僕のプレーは好調で、いいタイミングで d4, b4, そして a8 の駒を取ることができた。 【おそらく18. Bxd4 19. axb4 20. Rxa8 の手】 特に僕が自慢なのは、22. Rc1! だった。が、 22... Bb7 の後の 23. Nc5 が効くかどうかというところで、僕は読みを入れた後にヒカルを信用することにして、 Nc5 を止めてしまった。代わりに、23. Qc4 という手のアイディアが面白く見えてしまい、 クイーンを動かしてしまった。ところが、ヒカルがクイーンを取ったときに、当初意図していた 23. Bxc4 では、 23... Nxe4! 24. Re1 Kf8! 25. f3 Ra5! と返されることが分かり、路線転換でドローに満足するはめになってしまった。

 やはり、23. Nc5 が、かなり強力な手だった。23... Rxc5 24. Qxc5 Qxd3 の後の、25. e5! で単純にポーン得ができることが分かっていなかった。自分が情けなかったが、以前にも言った通り、 このようなタフな大会では頭を抱えて後悔しているヒマなんかない。

 僕の次の相手、エチエンヌ・バクロが、(彼が最近ほとんど指していない) 1, e4 としたとき、 うれしさで思わず顔をゆがめてしまったが、すぐに定跡選択を後悔することになった。 戦闘モードになっていた僕はナイドルフで楽しもうと思っていた。しかし、 よく分からないポジションに迷い込んでしまった。僕の bxa3?? が自己嫌悪と無理解の証拠だった。 それでも、(理由ははっきりしないのだけれど)相手のブランダーで救われることになった。 僕は相手に息つくヒマも与えず、コンピューターのようなスタイルでゲームを終えた。 特に相手が持ち時間不足でないときには、そんなプレーが結構難しいものだ。

 1位も視野に入った戦い(3点、1点、0点のスコア・システム)の大舞台で、 僕はカールセンと白番で対戦した。変わり身の早いノルウェー人は、またもや定跡をはずす方法を考え出し、 僕達は未知の領域で戦うことになった。始まって間もなく 10. Ne5 が少し早すぎで、 僕のアドヴァンテージは(仮にあったとして)あっという間に消えてしまった。17. Nf5 の手筋は面白いが、 ドローにするだけのワザでしかなかった。

 最後にゲームについては、ワン・ハオに対してダブル自滅となったという以外、付け足すことはあまりない。 前のと同じように、そのゲームも一方的なものになってしまった。 僕の Bh6 を挿入するアイディアはある手筋で全然効果がなかった。 このゲームによって、ワン・ハオとカールセンの両者より下位になった僕はナカムラと3位を分け合うことになった。 (僕のベルガー・タイブレークがヒカルのより低かったのは、僕が、0点だったモロゼビッチに勝ったのに対し、 ヒカルがもっと得点したボロガンに勝ったことが原因だ。それを気が効いた表現で言うことは遠慮したい。)

 僕の疫病神となった(そして親友でもある)ワン・ハオは、彼の攻撃的なチェスがサッカーのスコア・ システムと相まって、おそらく彼自身として最高の成功を獲得した。

 僕はと言えば、最後のゲームを忘れて考えれば、レーティングを19点も上げることができて嬉しかったし、 ビールでのすばらしいディナーの後で、満足感とともにこの地を後にすることができた。 またここに帰って来るぞという思いを胸に・・・。

[2012年 08月27日] 完訳

 アニッシュへのメッセージ 

[2012年 08月19日]

 ご要望にお応えします! 

 アニッシュの公式サイト日本語版ができておかげ様で1年半。 数は少ないですが、日本からメールが届くようになりました。ひとつをご紹介します。

 「・・・実は以前より拝見しており、ゲームの解説もそうですが、Anishさんの率直な感想、 心理描写などが非常に好きで、勉強させていただいています。あと、翻訳者の方々の、チェスへの愛情にも。 僕は直近のオランダ選手権の試合が非常に好きで、また出来れば、解説を読ませていただきたいなと思っております。」 (K.N.さんより)

 メッセージをどうもありがとうございました。ご要望にお応えします。オランダ選手権の棋譜の解説は、他雑誌の掲載記事だったのですが、このサイトへの転載許可をとりました。

 もうしばらくお待ち下さい!


 レイティング2700台への復活 

 アニッシュは2730の世界20位にランク 

[2012年 08月11日]

drop

 世界チェス連盟(FIDE)が発表した レイティング (実力を示す数値)で、 アニッシュ・ギリはレイティングを2700台に戻す2711となり、 世界ランクも35位にアップしました。また、20歳以下のジュニアのリストでは 2773のカルアーナ(イタリア)に次いで世界2位です。

 実は今年1月にレジオ・エミリアで優勝した後、アニッシュは大きなスランプに入り、 レイティングを大幅に落としていました。(右写真)理由は「自分がよく知っている」 ということでしたが、ファンとしては気が気ではありあませんでした。

 初めての大きな試練 

 

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優勝後のインタビューで微笑むアニッシュ

 これまで超人的な速さでレイティングを上げてきたアニッシュ・ギリ。 何しろIMになるヒマがなく、FMから世界最年少ですぐにGMになった彼にとって、 これは初めてと言えるほどの大きな試練でした。しかし、夏に入って少しずつ調子をとり戻してきたのです。 転換点は、チェス強国、オランダ国内選手権で圧倒的に優勝したことです。これで波に乗りました。 アニッシュはインタビューで「オランダでは以前のように変化手順がクリアに見えるようになってきた。」 (左写真)と話していました。

 FIDEのレイティングでは、ビール大会3位の成績がまだ加算されていません。 ライブ・チェス・レイティング という今現在の世界ランクを示す 有名サイトでは、すでにアニッシュは2730の世界20位にランクされていて(一番上の写真)、 アニッシュのファンとしてはひと安心というところでしょう。

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 期待していいオリンピアード、ロンドンのグランプリ 

 これから控えているのは、8月27日からのイスタンブール(トルコ)の チェス・オリンピアード 、そしてすぐに9月20日からのロンドン(イギリス)で開催の FIDEグランプリ です。( イベント 参照)

 オリンピアードではオランダの第1ボードでしょうし、グランプリは、すなわち世界選手権予選ですから、 どちらも多くの世界トップランカーと相まみえることになります。ですが、この調子なら恐れるものは何もありません。 ファンは彼の面白い攻撃的な内容のチェスを期待していいと思います。 日本に来られなかった代わりに、大活躍を約束させようではありませんか。

 今後も 皆様の応援 をお願いします!



 アニッシュの来日予定は消えました・・・ 

[2012年 08月06日]

gakkuri

 大変残念なニュースですが、アニッシュの来日予定は完全に消えました。 グランプリという世界選手権予選の候補にアニッシュが入ったためです。 アニッシュは、9月にロンドンで行われる予選に参加することとなりました。ファンとしては喜ぶべきことだと思いますが、本当にがっくりでした。

 ただ、アニッシュ自身も、ご家族も日本へは行きたいと思っているということですから、 そのときを期待していましょう。(写真は記事と無関係です)



 ビール・チェス・フェスティバル 

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第45回ビール/ビエンヌ

国際チェス・フェスティバル

7月21日~8月3日、スイス


アニッシュ大健闘の3位!

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5ラウンド、カールセンとギリ(右)の対戦 © Official site

 

ライブ(公式) > < ライブ2 > < ライブ3 > < 公式ページ

ライブ3(playchess 真ん中のボタン押して、ゲームを選択してクリック)

 < 棋譜鑑賞 > (ここで全棋譜を鑑賞できます)

 

 大会方式とクロステーブル 

 この大会は、ダブルラウンドロビン(白黒2回総当たり)です。持ち時間は40手100分、その後20手50分、さらにその後15分を追加、すべて1手ごとに30秒累加のフィッシャー方式。ドローを減らすために、30手未満のドロー・オファーは禁止、勝ち3点、ドロー1点、負け0点のスコアリング・システムを採用しています。

 3ラウンドからモロゼビッチは病気欠席で、ボロガンに交代しました。そのときの相手、カールセンはモロゼビッチとの不戦勝を受け入れず、レスト・デイにボロガンと対局し、勝ちました。

氏 名 ELO 得点
flag ワン・ハオ 2739 6 1 19 ・・ 00 33 33 31 30 --
flag カールセン,M 2837 4 6 0 18 33 ・・ 11 11 11 33 --
flag ギリ,A 2696 4 2 16 00 11 ・・ 11 33 -3 3-
flag ナカムラ,H 2778 4 2 16 00 11 11 ・・ 33 33 --
flag バクロ,E 2713 1 4 7 01 11 00 00 ・・ -1 3-
flag ボロガン,V 2732 1 6 4 03 00 -0 00 -1 ・・ --
flag モロゼビッチ,A 2770 0 0 2 0 -- -- 0- -- 0- -- ・・

 


 

 10ラウンド: ワン・ハオが逆転優勝 

[2012年 08月03日]

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優勝のワン・ハオに対して僕のダブル自爆完了だぁ。それでも、僕にとって最高の大会だった。 おいしいレイティング・ポイントをいただくこともできたしね! (^_^;) [アニッシュ]

 


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優勝したワン・ハオ © Chessbase

 最後まで息の抜けない優勝争いとなったビールですが、やはりドラマが待っていました。 優勝をねらったアニッシュが黒番で勝ちに行き、簡単な見落としをしてワン・ハオにポイントを献上してしまったのです。 これで、勝つしかなくなったカールセンは、かなりがんばるのですが、バクロの固い守りを崩せずにドロー。 この瞬間、大会中絶好調だった中国のワン・ハオが、カールセンを抜きさって逆転優勝しました。

 アニッシュは負けてナカムラと同率の3位。この順位は最終シードからすると素晴らしい順位ですが、 きっと優勝を逃したことの方が悔しい大会となったことでしょう。本当に残念です。

 実力は十分にあることを世界に証明 

 しかし、私たちアニッシュ・ファンは、 久しぶりに世界チェス界のトップで大暴れするアニッシュを見ることができました。そのことに満足し、 大きな拍手をアニッシュに贈ろうではありませんか。最後はコケたかもしれません(誰だって勝ちに行きます!)が、 世界選手権予選に参加する実力は十分にあることを世界に証明することはできたはずです。アニッシュ大健闘の3位でした。

  よくやった、アニッシュ!

10ラウンド:8月2日
ナカムラ 1-0 ボロガン
ワン 1-0 ギリ
カールセン 1/2-1/2 バクロ

 

 9ラウンド: トップ3人の優勝争いは最終ラウンドまでもつれ込む

[2012年 08月02日]

 トップのワン・ハオがボロガンに敗れました。ボロガンは初勝利です。 一方、アニッシュはカールセンと危なげなくドロー。よって、単独トップはカールセンですが、 ワン・ハオとアニッシュが同率で、トップとわずか1点差で2位です。大接戦となったビール。カールセンはドローでも優勝が確定になりませんし、アニッシュが優勝という期待もふくらみます。トップ3人の優勝争いは、最終ラウンドまでもつれ込みました。

 優勝がかかった最終ラウンド

 さあ、アニッシュの優勝がかかった最終ラウンドは、黒番でワン・ハオと対戦です!

 

9ラウンド:8月1日
バクロ 0-1 ナカムラ
ギリ 1/2-1/2 カールセン
ボロガン 1-0 ワン

 

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ドロー。すでに10手目から、勝つ意欲を封じられてしまった。明日は最終ラウンド…黒番でワン・ハオと! (^^)v [アニッシュ]

 


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8ラウンド開始前のアニッシュ © Chessbase

 

 8ラウンド:アニッシュが冷静に読み勝ち、難局を制す!! 

[2012年 08月01日]

 誰にとっても大切なラウンド。しかも、どのゲームも大熱戦でした。ここでアニッシュは黒番でバクロと壮絶な打ち合いになります。この激しいバトルの中でもアニッシュは冷静に読み勝ち、難局を制しました!

 するとカールセンもボロガンに勝ってトップの座を守ります。ボロガンは2回目のベンコー・ギャンビット定跡でしたが、カールセン相手にまったく通じませんでした。残るはナカムラ対ワン・ハオの試合です。ナカムラはときに優勢に試合を進めていました。どちらが勝つか分からない好ゲームでしたが、ワン・ハオが中盤で一瞬のすきを突き、難しいゲームを勝って、カールセンと共にトップに並びました。

 

 終盤に向けて優勝争いに加わるアニッシュ

 平凡なドローが少ない、本当に見どころ満載のトーナメントになっています。 ナカムラの負けで、優勝争いはカールセン、ワン、そしてアニッシュ・ギリの3人にしぼられました。 この大きな国際大会で、終盤に向けて優勝争いに加わるアニッシュは、オランダ選手権に続くすばらしい活躍です。 世界ランク も一気に29位も上げる勢い!

 さて、残りはあと2局、アニッシュの相手は1点差でトップを走るカールセンとワン・ハオ。舞台は整いました。 こうなったら直接対決で優勝を決めるしかありません。がんばれ、アニッシュ!!

 

8ラウンド:7月31日
ナカムラ 0-1 ワン
カールセン 1-0 ボロガン
バクロ 0-1 ギリ

 

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僕のナイドルフ(特に19...bxa3)が、無茶だったけど、それが幸運にもバクロを混乱させたみたい(^_^) ここまで超ラッキー。明日はカールセンと(^^)v [アニッシュ]

 


 7ラウンド:アニッシュがカールセンに抜かれる 

[2012年 07月31日]

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8ラウンドのカールセン © Chessbase

 アニッシュ対ナカムラは大きな事件なく30手でドロー。(大会ルールで30手前にドロー・オファーできません)ボロガンもバクロに対してドロー。 ボロガンにとっては初の負でない結果です。残ったのはワン対カールセンでした。 ほとんど互角の中盤戦、ワンのポジションは決して悪くなかったのですが、 カールセンはプレッシャーをかけ続け、揺さぶり続け、天才的なエンディング・テクニックでトップのワンから勝ちをものにしました。 とても信じられない強さですが、こんなことができないとレイティング世界1にはなれないのでしょう。

 これでアニッシュはカールセンに抜かれて、カールセンとワンが1位タイになりました。しかし、まだアニッシュにも優勝のチャンスが十分にあります。残すはあと3試合。がんばれアニッシュ!

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局後の検討で談笑する(左)アニッシュとナカムラ © Chessbase

 

7ラウンド:7月30日
ギリ 1/2-1/2 ナカムラ
ボロガン 1/2-1/2 バクロ
ワン 0-1 カールセン

 

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チャンスを逃して残念だ(やっぱ、23.Nc5 だった)けど、明確にそう言い切れない点もあるからね。明日は黒を持ってバクロとだ! [アニッシュ]

 


 カールセンが3位に浮上 

[2012年 07月30日]

 レスト・デイに、ボロガン対カールセンの試合が行われました。局面はほとんど互角のまま推移しましたが、 「これを勝つのか」と感心させられるようなカールセンの試合運びによりボロガンからポイントを奪いました。 これでカールセンが3位に浮上です。

エクストラ・ラウンド:7月29日 < 棋譜
ボロガン 0-1 カールセン


 ボロガン:序盤研究でも世界屈指のグランド・マスター 

[2012年 07月29日]

Bologan

 これで前半戦終わって、アニッシュは、ナカムラ、カールセンより上の単独2位。 しかもトップのワン・ハオは射程圏内にとらえました。「お疲れ様」のアニッシュですが、 ここでレスト・デイなのがラッキーと言えます。

 このレスト・デイでは、そのボロガンとカールセンの保留しているゲームを行う予定。 カールセンは、モロゼビッチの不戦敗をあえて受け入れませんでした。 チェス・プレーヤーとしての心意気を感じさせる話ではあります。

 また、今回アニッシュに負けたヴィクトール・ボロガンには本当にお気の毒さまです。 モロゼビッチの代わりに突然入るのは、決して彼の本意ではなかったでしょうが、 代役のボロガンには男気と、チェス界全体への深い愛情を汲み取らずにはいられません。 実際のところはどうなのか不明ですけれど・・・。

 ちなみに彼はプレー内容だけでなく、序盤研究でも世界屈指のグランド・マスターです。一部で言われているように「かませ犬」とか、弱いマスターではありません。この大会はGMも全敗するレベルなのです!

 

 6ラウンド:アニッシュが根性の粘り勝ち! 

[2012年 07月28日]

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6ラウンドのアニッシュとボロガン © Chessbase

 注目のカードはナカムラ対カールセンでしょうが、事件もなくドローになりました。 また、トップ独走のワン・ハオは白のバクロに良い形を作られますが、何とかドローにします。

 よって、今日の見どころは、わずかに優勢なアニッシュがボロガンから勝ちを取れるか、でした。 アニッシュの1ポーン・アップですが、劣勢のボロガンにもドローのチャンスがある局面が、 延々と続きます。結局92手にアニッシュが根性の粘り勝ちとなりました!

 

5ラウンド:7月28日
ナカムラ 1/2-1/2 カールセン
バクロ 1/2-1/2 ワン
ギリ 1-0 ボロガン

 

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 Won. Happy. Tired. (勝った~。うれしい~。疲れた~。)[アニッシュ]

 


 5ラウンド:世界1カールセンと堂々の渡り合い 

[2012年 07月28日]

 お待ちかね、レイティング世界1のカールセンとアニッシュの対戦です。 定跡はカールセンの 1.e4 に対してアニッシュのお得意技ペトロフ。どうしても勝ちが必要なカールセンは、 メイン・ラインを避けてキングサイドへの攻撃を大胆に仕掛けますが、アニッシュはかわしながら反撃します。 ミスのない両者の応酬があり、ゲームは色違いビショップの理論的なドローに落ち着きました。

 最下位シードのアニッシュですが、カールセンと堂々の渡り合いでした。優勝さえねらえるポジションにいるので、後半戦が期待できます。

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会場の様子 ステージ上で一人考えているのがアニッシュ © Official site

 一方、ライバルのナカムラは、複雑なキングズインディアンの攻防の中から、強引にバクロから勝ちをもぎ取ったのはさすがです。 病欠のモロゼビッチに代わったボロガンは、ワンにベンコー・ギャンビット(昔流行したが今は世界トップレベルで評価の低い定跡)をぶつけましたが、ワンは、巧みに優勢なエンドゲームに持ち込んで勝ちとました。まるでベンコー対策の見本のような指し回しで、1位キープです。

 モロゼビッチが途中欠場なのは大変残念ですが、どのゲームも見ごたえあり、前半戦終わって現在独走状態のワンをアニッシュ、ナカムラ、(カールセン)が追いかけるという、見ている方としては非常に面白い展開となっています。

4ラウンド:7月27日 < 棋譜
ナカムラ 1-0 バクロ
カールセン 1/2-1/2 ギリ
ワン 1-0 ボロガン

 

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 すご~く気分いい局面だったのにドローにして、僕はバカだなあ。まあ、それでも、文句言っちゃいけないくらい良い順位にいるけど・・・(^_^;) 明日は白でボロガンと![アニッシュ]

 

4ラウンド:ファイトあふれるゲーム内容ばかりの大会に 

[2012年 07月27日]

 すばらしいことに、どのゲームにしても、ファイトあふれるゲーム内容ばかりの大会であり、 ファンを沸かせています。世界トップクラスが参加していても、お座なりな短手数のドローが多い大会は、 結構ありがちなのですが、今年のビール大会はこれまで一つとして気の抜けるゲームがありません。

 アニッシュは、白でワン・ハオとでしたが、序盤の指し過ぎがたたり負けてしまいました。 残念ですが、考えてみれば今までが勝ち過ぎ。貯金があるのでひと休みと考えましょう。 ナカムラはモロゼビッチと代わったボロガンに黒番ながら貫禄勝ち。カールセンは黒番ながらかなりプッシュして いましたが、バクロがドローに逃げ切りました。

4ラウンド:7月26日 < 棋譜
ボロガン 0-1 ナカムラ
ギリ 0-1 ワン
バクロ 1/2-1/2 カールセン

 

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 がっかりのゲーム内容で、ひどい手 15.g3 の後、何もかもうまく行かなかった…。 明日は取り返すチャンスかな (^_^;) カールセンと![アニッシュ]

 

anish
グランドマスター アニッシュ・ギリ © Official site

 

 3ラウンド:華麗な中央突破で見事にバクロを撃破! 

[2012年 07月26日]

 アニッシュが2つのエクスチェンジ・サクリファイスを披露しました。華麗な中央突破で見事にバクロを撃破です! これでアニッシュが単独トップに踊り出ました。

 ワン対ナカムラは、難しい中盤戦から主導権をにぎったナカムラがそのまま押し切るかに見えましたが、 なぞの大ポカが出て、ワンの拾い勝ちに・・・。さらにモロゼビッチが対局場に現れません。 そのためカールセンとの注目の一戦が宙に浮いてしまいました。今後の混乱を予感させる展開になりました。

3ラウンド:7月25日 < 棋譜
ワン 1-0 ナカムラ
ギリ 1-0 バクロ
モロゼビッチ *** カールセン

 

 モロゼビッチが病気欠席に・・・ 

 驚きのニュース。モロゼビッチが病気欠席になりました。代わりにボロガンというグランドマスターが 参加します。アニッシュ、バクロの勝ちは有効だそうです。つまりボロガンは0点からのスタートになります。

 プロのレベルでプレーヤーの棄権、不戦は非常に珍しいことです。それは、ファンを裏切るだけでなく、他の参加者に大きな負担を強いるマナー違反、契約違反だからです。ですからモロゼビッチも医師の診断書を提出しました。主催者が他のプレーヤーと交換することも聞いたことがありません!!(ボロガンはじめ、参加者の承諾がなければできなかったことでしょう)

 

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 全く無害な僕の新手にバクロが変な反応をしてくれたおかげで勝てた! ここまで超ラッキー。
明日は再度ワン・ハオと今度は白番で対戦![アニッシュ]

 

 2ラウンド:ナカムラの攻撃をかわしてドロー 

[2012年 07月25日]

2ラウンド:7月24日 < 棋譜
ナカムラ 1/2-1/2 ギリ
バクロ 1-0 モロゼビッチ
カールセン 1-0 ワン

 ナカムラの攻めはかなり強力に思えましたが、アニッシュは余裕でかわしていたようです。 とにかく、一安心のドローを取ることができました。マスターレベルで黒番ならば、ドローでもがっかりする結果ではありません。(特に相手が豪腕のナカムラなら、なおさら!)例えれば、チェスの黒番は、テニスでサーブ権がないゲームのようなものです。

 モロゼビッチはバクロと競り合って連敗。カールセンは強引にワンを攻め倒した。


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 ちょっと不安定に見えた場面もあっただろうけど、何とかうまくドローに持ち込めた。明日は白番でバクロと。(オランダのときも入れて)3ゲーム続けて黒番だった![アニッシュ]

 

 1ラウンド:世界ランク9位モロゼビッチに黒番で気合い勝ち! 

[2012年 07月24日]

moro

© Official facebook

 1ラウンドの相手は、オランダ選手権の相手と格がちがいます。 ギリ・アニッシュは、「盤上の魔術師」世界ランク9位のモロゼビッチ(ロシア)と黒番で対戦しました。 創造的な手で相手を幻惑するモロゼビッチですが、しかし、アニッシュを相手にして勝手がちがいました。 幻惑されたのはむしろモロゼビッチの方で、非常に難解で、形勢不明の局面からアニッシュに振り回され、決め損ない、 そして最後は受けを間違えて自滅しました。完全にアニッシュの気合い勝ちではないでしょうか。

 オランダ選手権での絶好調が続いているような、すばらしいスタートを切ることができました。 ただし、今年のタタ・トーナメントでは後半大きくくずれたアニッシュだけに、油断は禁物。 次のナカムラは世界ランク7位のブリッツ・キング。(この大会前の余興のブリッツ大会でもカールセンらをたおして優勝!) 楽しみなカードです。

 なお、棋譜はアニッシュのものだけでなく全員の棋譜をビュワーで鑑賞できるようにしました。ご利用ください。< ゲーム

1ラウンド:7月23日 < 棋譜
カールセン 1/2-1/2 ナカムラ
ワン 1-0 バクロ
モロゼビッチ 0-1 ギリ

 

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 局後の検討室ではちょっと恥ずかしいミスが分かったけど、まあ、勝ちは勝ちだよね!(笑)。 明日はもう一丁黒番で、今度はナカムラと![アニッシュ]

 

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左からナカムラ、バクロ、カールセン、ワン、アニッシュ、モロゼビッチ © Chessbase

 最下位シードからのスタート 

[2012年 07月23日]

 先日、オランダ選手権でチャンピオンを防衛したばかりのアニッシュ・ギリは、 すぐにスイスのビールに飛び立ちました。そこでは毎年有名なチェス祭りが行われていて、 メイン・イベントはグランド・マスター・クラスの総当り戦です。世界ランク1位のカールセンはじめ、 世界からよりすぐりのエリートが集まりました。アニッシュでさえ、最下位シードからのスタートです。 つまり、最下位になっても当然という大会への参加なのです。

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ビール・グランドマスター・クラス参加者紹介 © Chessdom

 しかし、アニッシュにとっては、そんな過酷なバトル・フィールドも天国と同じなのでしょう。 世界の強豪に挑戦することが「楽しみだ」( チェスヴァイブス・インタビュー より)と言っているのですから。 オランダ選手権での圧倒的なプレーはすばらしいものでした。そこで復活した感のあるアニッシュが、世界のトップレベルにどう立ち向かうのか、その辺を大いに期待しましょう!