アニッシュの記事 2012年03月

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 ヨーロッパ・チェス選手権


 2011年3月19日~4月1日、ブルガリアのプロウディフにおいてヨーロッパ・チェス選手権が行われました。 GMが百数十人参加し、スイス式で戦う大きな大会です。アニッシュ・ギリは4番シードでスタートし、 優勝も期待されましたが、調子があがらず、レイティングもかなり下げるような残念な結果となりました。 しかし、いつでも勝てる訳ほどチェスは甘くありません。「原因は特定できている」ということですから、 次の大会に期待したいとおもいます。

 なお、単独優勝したのは、最近表舞台から遠ざかっていたロシアの若き鬼才、ドミトリー・ジャコヴェンコでした。



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アニッシュ・ギリ 全ラウンドの棋譜:         2012_03ec


[2012年 04月 01日]

 最後はきっちり勝って終了 

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トップ・ボードで決勝戦を戦うジャコベンコ(左)とフレシネ(右) © Official site

 GMに対し、最後はきっちり勝って終了となりました。それでも348名中91位、 2717のレイティングに対してパフォーマンス(この大会だけのレイティング)が2543なのは、 信じられないほど良くない成績でした。

 「これまで出た大会で最悪の結果」と本人が認めている通りですし、何かうまく回っていないという印象でした。

 チェス・ファンなら誰でも世界トップクラスになりたいと思うにちがいありません。 しかし、そうなってしまうと、常に入賞を求められる苦しさがあります。レイティング世界一の カールセンは「どの大会でも優勝以外の結果はいらない。」と言っていました。 何てつらく、孤独な戦いでしょうか。アニッシュもそれに近いレベルにいるのです。

 初めて壁に突き当たったアニッシュなのかもしれませんが、すぐにトップクラスに戻って来るでしょう。 そのときは前より一段とたくましくなっているはずです。私たちアニッシュのファンはその日を楽しみに待っていることにしましょう。


 新ヨーロッパ・チャンピオンの誕生 

 大会の優勝者は、最終ラウンドにトップのローレン・フレシネ(フランス)からポイントを奪ったドミトリー・ジャコベンコ(ロシア)でした。 見事な逆転単独優勝であり、新ヨーロッパ・チャンピオンの誕生です。

 なお、アニッシュの全ラウンド棋譜は、ビューワー付きのページ( 2012_03ec )でご覧いただけます。


 アニッシュの戦績 

Rd ボード 対戦相手(レイティング) 勝敗 累計得点
1R 4ボード白番 GMジナウ,ヴラド・クリスチャン (2497) 勝ち 1.0
2R 3ボード黒番 GMニズニク,イリヤ (2585) 負け 1.0
3R 192ボード白番 IMストヤノヴィッチ,ダリボール (2471) 引分 1.5
4R 182ボード黒番 IMパイハーゼ,ルカ (2491) 引分 2.0
5R 72ボード白番 GMホルツケ,フランク (2508) 負け 2.0
6R 107ボード黒番 IMマネア,アレクサンドル (2381) 勝ち 3.0
7R 76ボード白番 FMファドール,タマス,ジュニア (2482) 負け 3.0
8R 105ボード黒番 ゴウマス,ゲオルギオス (2398) 勝ち 4.0
9R 77ボード白番 GMコバノフ,ニコライ (2502) 引分 4.5
10R 75ボード黒番 FMペトリソール,アドリアン・マリアン (2382) 勝ち 5.5
11R 52ボード白番 GMゾンタフ,アンドレイ (2556) 勝ち 6.5

[2012年 03月 31日]

 勝率5割確保 

 最終ラウンドを残して、アニッシュは勝率5割を確保できました。今回はそれが精一杯の厳しい結果となりました。

 しかし、苦しんだ上位者はアニッシュだけではありません。アニッシュと同じ位置に有名GMストフスキーがいます。天才児ニズニクもすぐ上の6点で、入賞にはほど遠い位置です。 時期世界選手権候補でもおかしくないGMマメジャロフは不調の上に開始前10秒の遅刻で負け(ゼロ・トレランスといって、最近の大会では普通になりつつある厳しいルール)になり、今は途中棄権しているようです。 つまり、ヨーロッパ個人選手権はこれほどまでに層が厚く、過酷な大会であり、誰にとっても勝つのは簡単ではないということです。

 その中で飛び出したのはフランス王者のGMフレシネ(8点)です。とはいえ、今日が黒番ですからまだ後続の9人(!)に も、まだチャンスがあります。アニッシュは、やっと普通のGMに当たりました。しっかりしたチェスで締めてほしいと思います。

[2012年 03月 30日]

 後半も調子が上がらず 

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試合中の選手と観戦者 © Official site

 

 アニッシュの苦しいトーナメントは続きます。後半も調子が上がらずといったところでしょう。 すでにトーナメントの順位には目は向きませんが、最後まで折れずに戦いきってほしいと思います。 11ラウンドまであと2つとなりました。


[2012年 03月 28日]

 後半戦に突入 

 6ラウンドは勝ったものの、7ラウンドの格下相手に負けたのが痛い。 後半戦に突入しましたが、かなり調子が悪いといっていいでしょう。 がんばれ、アニッシュ!


[2012年 03月 25日]

 苦しい戦い 

 ギリ,アニッシュは、5ラウンド戦って2ポイントしか取れない苦しい戦いを強いられています。 タタの大会から続く不調から脱出していないのでしょうか。上位入賞の望みはまだありますが、非常に難しくなったのは事実でしょう。

 しかし、チェスの世界は天才、強豪がひしめく修羅場です。これまでも楽な戦いはひとつもなかったはずであり、アニッシュはそれらを乗り越えてきました。 ここからのがんばりに期待したいと思います。がんばれアニッシュ!

 

[2012年 03月 22日]

 注目の神童ニズニクとの対戦 

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ニズニク,イリヤ(左)と、ギリ,アニッシュ(右)のゲーム開始 © Official site

 

 2ラウンド目に話題のペアリングとなりました。世界のチェス界注目の、神童イリヤ・ニズニクとの対戦です。 (初対戦ではありません)

  ニズニクは15歳、世界最年少GMであり、少し前はアニッシュ・ギリが最年少でした。 そのゲームは残念ながらあっさりニズニクの勝ちとなりましたが、今後もこの二人の対戦は、大きな話題になることでしょう。

 トーナメントの先はまだ長いので、気持ちをうまく切り替えて3ラウンドに臨んでほしいものです。

[2012年 03月 21日]

 無難に初戦を勝つ 

 スイスの初戦は格がちがう相手に当たるのが普通です。そうはいってもこの大会はGMだけでも170人以上ですから、 格下といえども相手はGMです。ドローに逃げられることさえ許されないプレッシャーの中、アニッシュは1ラウンドの相手に対し、無難に初戦を勝つことができました。結果は当然なのでしょうが、前回大会の連敗を知っているファンの気持ちとしてはほっとしたというのが正直な所でしょう。

 ヨーロッパ選手権エントリー・リスト

シード
(シード)姓,名
国名
ELO
 カルアーナ,ファビアーノ 
イタリア
2767
 マメジャロフ,シャフリアール 
アルメニア
2752
 ジャコヴェンコ,ドミトリー 
ロシア
2729
 ギリ,アニッシュ 
オランダ
2717
 ライザンツェフ,アレクサンダー 
ロシア
2710
 ヴィチュイゴフ,ニキータ 
ロシア
2709
 バクロ・エチエンヌ 
フランス
2706
 ジョバーヴァ,バードゥル 
グルジア
2706
 グラチェフ・ボリス 
ロシア
2705
10  マラコフ,ウラジミール 
ロシア
2705
・・・他、全参加者348名

チェス大会プロフィール
大会名 第13回ヨーロッパ(個人)チェス選手権
日 時 2012年3月20日~3月31日
場 所 プロウディフ(ブルガリア)
形 式 スイス11ラウンド、平均ELO 2445
持ち時間 40手90分、その後30分のみ追加+1手30秒累加
タイブレーク ①パフォーマンス、②メディアン、③ブッフホルツ、④勝数

  


[2012年 03月 19日]

明日からスタート

 いよいよヨーロッパ・(個人)チェス選手権が明日からスタート。 場所はブルガリアのプロウディフ。このところ学業に専念していた「普通の高校生」アニッシュ・ギリが、 久々にチェスの表舞台へ登場します。 賞金総額1千万円以上、GMだけでも約170名参加という大きな大会です。そこでアニッシュは第4シードとなります。 (上表あるいは Chess Results.com 参照)

 もちろん優勝は難しいですが、アニッシュなら手が届くところにあります。しかしながら、 前回のタタ・スティールでは後半くずれて散々な結果でした。とにかく今回はその連敗を振り払う内容を期待したいものです。 ゲームは日本時間21日からのようです。日本のチェス・ファンの方には応援をよろしくお願いします!



 東日本大震災から1年・・・

[2012年 03月 07日]

anish

日本にいたころのアニッシュ


 あの日から1年

 あの日から1年の月日が立とうとしています。日本全体は落ち着きを取り戻しつつありますが、 被災地では未だに避難生活を送る方々が数多く、放射能汚染の怖れは少しも軽減していません。 希望を失いそうになるときに、これまで世界中から日本へ寄せられた多くの励ましから、 私達は大きな勇気を与えられました。海外には日本を愛する方々がたくさんおられたことに気付かされたものです。

 アニッシュ・ギリも日本ファンのひとりです。昨年のメッセージをもう一度ここに掲載することよって、 あの大災害から1年の節目をともに考えたいと思います。

 1年前のアニッシュからのメッセージ

 「先日、日本で起こった震災は、僕にとって非常に辛く悲しいニュースでした。 わずか数年間でしたが僕はこのすばらしい国、日本に住んでいましたし、人々や文化が大好きだったので、なおさらです。 それでも、一生懸命で団結力がある日本のみなさんなら、この大災害を切り抜け、立ち直ってくれると思いますし、 僕はそう確信しています。」・・・以下は 日本語版について

2011年4月26日 ギリ,アニッシュのメッセージより

    写真ギャラリー(日本にいたころのアニッシュ)


 ヴァイカンゼーでの自戦記  対ガシモフ戦

[2012年 03月 03日]

ヴガール・ガシモフとの定跡理論対決 『でたらめか神業か』


 敗因は単にプレパレーションの失敗ではなかった・・・?

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アニッシュ・ギリ(左)のゲームを観るアロニアン © Fred Lucas

 グランド・マスターどうしの対決は、忍者どうしの戦いのように、普通の人にはその全貌が見えません。 ですから、コンピューター評価の受け売りや、まちがった勝手な解説がメディアに出回ってしまうことが多々あります。 対局者がどれだけ骨身を削っているか、その裏事情を対戦者から直接聞ける機会は、そう多くありません。

 たとえば、対ガシモフ戦でアニッシュが負けた、あの一局、単にプレパレーションの失敗だったのでしょうか・・・?

 公式サイト日本語版では、このゲームの自戦記をお届けします。ときに冷徹、ときに超楽天的なアニッシュの若々しい解説が、 本物のチェスとはいかに奥深いものかを私たちに届けてくれます。

 さらに、日本のチェス・ファン向けに基本的な部分での解説(by山田弘平)を補足しましたので、レベルはかなり高目ですが、 多少読みやすくなっていると思います。 どうぞ ご覧ください

3月下旬のヨーロッパ選手権。出場するアニッシュの応援をよろしくお願いします!


 「コンピューターは過小評価している」

position
図1黒番 12. Nb3 までの局面

 図1以下、

 12... Qxa2!

 ヴガールは、試合後僕に Nb6 が「おそらく簡単な勝ちだったろう」と教えてくれようとしたが、 このときは数分の考慮でポーンを取ってきた。残念・・・、気づくのが遅いよヴガール、そう来てほしかった!  この手 Qxa2 は黒が駒損の代償をコンペンセーション(代償)を握ってプレーしているのが明らかなのに、 コンピュータは過小評価している。

 

 (図1から変化として、)

 12... Nb6

 は、初期の実戦ではメインムーブだと考えられていたが、 もし白がやるべきことを知っているなら、この手は怪しい気がする。

 13. Nb3!

 13. Bc6+? Bd7!

  13... Qa3+ (図2)

 13... Qb5 14. c4! Nxc4 15. a4! Qxa4 16. Qc3 は、アドバンテージがある。本当に素晴らしい手順だ。

 「マスターレベルならば一目で切り捨てる」

position
変化図A 13... Qxa2? までの局面

【訳注:(13... Qa3+ の代わりに)13... Qa5xa2? (変化図A)とポーンを取る手は、まずい。 マスターレベルならば一目で切り捨てる手順だが、それはなぜだろうか?

 14.Bc6+! (14. Qd4!? 白良しの順は省略) 14... Bd7  (14... Nbd7 15. Qd4 黒からのカウンターが何もなく、白勝勢。このあとはゆっくり攻めていけば良い。)

  15. Qd4! 盤上この一手の好手! 大事なマス全てに狙いをつけている。 以下 15... Na4 16. Bxa4 Qxa4 17. Qxa4 Bxa4 18. f3 となって、エクスチェンジアップ。 アニッシュはこの手の解説を省いているが、この変化はGMにとって当たり前の事なのだろう。すごい!】

 

 


「無理はないでしょう?」

position
図2 13... Qa3+ までの局面

 図2から

 14. Kb1 Nxa8 15.Qd4! e5 図3

 15... Be7 16. Bc1!  おっとクイーン・トラップ!


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図3 15... e5 までの局面


 (図3から)

 16. Qa7! Nxe4 17. Rd3

 Nxc3+ からのメイトをうっかりすることはない。

 Nxg5 18. Qxa8 Kd8 (図4)

 

 

 

 


position
図4 18... Kd8 までの局面

 (図4から)

19. f4!

 で、白勝ち。 「どうです皆さん、僕がこのラインを試したくなったとしても無理はないでしょう?」と言いたいと思う。

 【訳注:19.f4! 以下、 もし 19... exf4 ならば 20.Rd4! で、次の Rc4 として c8 ビショップを取る手が受からず、黒の負けになる。】

 (・・・以上、アニッシュの解説より)



  <アニッシュの 解説全文(動く盤面付き)


 でたらめか神業か

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アニッシュ・ギリ(奥)とヴガール・ガシモフ(右) © Fred Lucas

 以上は、ほとんどアニッシュが試合前に準備した内容ですが、(それもパソコン画面で数分間に!) 非常にレベルが高い攻防で、パズルのように意外な手順が連発します。 たとえば、火急の場面でぼんやり駒を浮かせるとか、キング直前まで攻めて来た敵をワナにはめるといった手順はアマチュアに想像もできません。

 でたらめか神業かと映りますが、 これが深遠なチェスの奥義です。しかしながら少しでも理解できれば、他ではめったに得られない本物の面白さが、感じ取れるはずです。

 ご紹介したのはそのハイライトの一部です。ぜひ 全文 をご覧下さい。 他にも素晴らしいアニッシュの ゲーム解説 が多数あります。また、 函館チェスサークル のサイトにも関連した練習問題がありますのでご参照いただけたらと思います。 (山田明弘)